七代目嵐徳三郎伝


歌舞伎ざんまい幕のうちそと


船木浩司=著・大阪東方出版=刊


2004年1月15日初版発行


管理人・村をんなが16年間追っかけをしていた歌舞伎役者・嵐徳三郎さんの伝記が
発刊されました。
著者の船木浩司さんは香川県で発行されている四国新聞に「花もあらしも徳三郎」という
連載を1年間にわたりなさっておられました。
その「花もあらしも徳三郎」を元に一冊の本としてまとめられ、それにプラスして
新聞には載せられなかった真相なども書かれておられます。
ただ一冊の本にまとめるためには、徳三郎さんとはあまり関係のない歌舞伎の基礎的な話
なども足されてあるので中だるみな箇所もあり、こんな話よりはもっと面白いエピソード
あるのに(例えば中座に出演してた時に阪神大震災で難波までの交通手段が
失われてしまい苦労した話とか)もったいないって思うところもありました。
でも、徳三郎さんが話しているそのままが感じられる章もあって、
これは本人と話したことがある人でないと書けないというところもありました。
貴重な写真などもたくさん載せられていますし、略年表もありますので
徳三郎という役者を知る一冊になると思います。


歌舞伎というのは大人の鑑賞に堪える演劇だと私は思います。その中で舞台に出てくる
だけで主役を喰うほどの光彩とオーラを放っていたのが徳三郎さんではなかったでしょうか。
力のある座頭役者にとって徳三郎さんのような役者が脇役に出ることは芝居の質が上がり
自分の理想とする芝居を作り上げることができるのですが、力のないものが座頭となり
脇に徳三郎さんが入ると自分の存在が薄れてしまう怖い存在の役者だったと思います。


観客としての私にとって、もう徳三郎さんが出てくるだけで、目は釘付けになりました。
舞台の隅で後ろ向きに座っていたとしても、その後ろ姿にさへ色香が匂い立つようで
主役が舞台の真ん中でどんな演技をしようとも、惚れ惚れと見つめていたものです。
(ひとりだけ違う方を見ているのですから、主役の人には目障りだったでしょうが)


華の姿を私たちの中に残して、逝ってしまった徳三郎さん。
私は先代の仁左衛門さんのように自らの筆で自伝を残して欲しかったのですけれど
でもこのように一冊の本として形に残されたのも、役者としても人間としても多くの人たちから
愛されていたからなのでしょう。

トップページへ戻る

inserted by FC2 system