新劇通信簿

今年の例会(私のコメント付き)


2月4月6月

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6月

題名・・・先生のオリザニン
題名・・・先生のオリザニン
作者・・・堀江安夫
演出・・・眞鍋卓嗣
劇団・・・俳優座
主演・・・加藤剛
男性・とてもよかった=32%・よかった=49%・まあまあ=17%・よくなかった=2%
女性・とてもよかった=41%・よかった=44%・まあまあ=14%・よくなかった=1%

 鈴木梅太郎の半生を前・後編に分けて作られた作品です。前編は静岡県の農家に生まれた梅太郎が
建築家辰野の書生となって、帝国大学農科大学の古在の元で学び始めるところから現在のビタミンB1であるオリザニンを発見するところ
まで。後編は戦時中の理化学研究所で、オリザニン等梅太郎の発見から作られた薬によって多くの人たちが救われていたのですが、
その当時梅太郎は米を使わずに酒を造ることを考えていて、そのことに反発する若い学生が登場します。

 配役は前編の若い頃の梅太郎を加藤剛さんの息子・加藤頼さんが、梅太郎が師事した古在由直を加藤剛さんが演じられました。
後編は加藤剛さんが梅太郎をなさいました。
 古在由直の元で学んでいるとき、足尾銅山で鉛害で米が育たなくなる被害を地元の農民たちが研究室に調査を依頼しにやってきます。
殖産興業が国策の時代に国と戦うことになり、もう教授となっていたのに古在はドイツへ留学という形で飛ばされてしまいます。

 その後、梅太郎もドイツに留学後、日本に帰ってきて陸軍の軍人には脚気の患者が多く、海軍の軍人には脚気の患者が少ないということで、
鶏を使って研究をしていました。梅太郎は脚気の原因がオリザニン(ビタミンB1)不足であることを突き止めます。
しかし医学会では日本の風土病的な細菌(脚気菌)が原因であると、農学者の梅太郎を一段低く見ていました。
 イギリスでビタミンが発見され、梅太郎の発見したオリザニンもビタミンに含まれてしまいます。これは学会で欧米優先されてたんだなと思いました。
 しかし梅太郎はオリザニンを商品名として薬品を発売し大成功します。これが理研の基礎になりました。

 この作品を見ながら、現在でも理研を冠した企業が東証1部上場企業の中にあることと、先年理化学研究所に在籍していた
女性研究員をめぐる毀誉褒貶のごたごたを思い出していました。理研の歴史を知ることができて参考になりました。

 そして舞台に立つのはこれが最後になるかもしれない加藤剛さん、この前の例会で仲代達也さんが軽々とステップを踏んでおられた姿を見ていましたので、心の中で見比べてしまう残酷な私がいました。ただやはり生真面目な研究者は加藤剛さんのはまり役で楽しませてもらえました。

 妻役の有馬理恵さんが明るくて、重くなりそうな舞台をうまく回しておられたように思いました。

 加藤剛さんの息子・頼さん、たぶん初めて拝見したと思うのですが、剛さんとは違った持ち味の方で、でも基本がしっかりしているなと感じました。
私の評価・・・まあまあ

4月

題名・・・おれたちは天使じゃない
作者・・・サム&ベッラ・スピーワック
訳・・・丹野郁弓
演出・・・丹野郁弓
劇団・・・無名塾
主演・・・仲代達也
男性・とてもよかった=43%・よかった=47%・まあまあ=8%・よくなかった=2%
女性・とてもよかった=58%・よかった=36%・まあまあ=6%・よくなかった=0%

 
 南米フランス領ギアナの町・カイエンヌ。フランスの犯罪者の流刑地でもありました。ここにある雑貨店が舞台。
雑貨店にはデュコテル一家が住んでいました。主人のフェリックスは支配人で、元はフランス本国で雑貨店の支配人をしていたのですが、
経営不振だったため経営者からこの地に左遷されていました。

 デュコテルは商売人というよりも事務員的な性格で、ツケで物を売ってもその代金を回収するのが苦手なため経営状態は芳しくありません。
 この雑貨店の屋根を修理に3人の囚人がやってきます。

 そしてフェリックスにとって最大の危機・経営者が雑貨店の経営状態を調査にやってくることになり…。

 3人の囚人がやってきたのはクリスマスイブ。キリスト教徒だとキリストの生誕を祝うために東方の三博士がやってくるという話を基礎知識として持っているので、このシチュエーションだけでどんな幸運が待ち受けているんだろうと期待してしまうんでしょうね。
残念ながら、私にはそういう基礎知識が無いので、普通に囚人3人が巻き起こした事件(奇跡)を楽しんでしまいました。

 仲代達矢さんは詐欺師のジョゼフ役。スキップで舞台に登場してくるような男です。詐欺師で捕まった男だけあって、口八丁。
店に買い物に来た客相手に、サイズの合わない服も喜んで買わせるぐらいの力があります。ジョゼフを店員に雇ったなら、
フェリックスも経営者が雑貨店の経営状態を調査に来るのにびくびくしなくても良かっただろうにと思えるほどでした。舞台上の仲代さんは
テレビドラマなどで拝見するような重厚さとは真逆の軽い男だったので、これは珍しいものを見ることができたと楽しませてもらいました。

 フェリックスの一人娘マリ・ルイーズは経営者の息子を恋人だと思って久しぶりに会えるのを楽しみにしていたのですが、
息子の方はマリ・ルイーズを都合のいい女としか思っていなかったようで、すでにパリで新しい恋人がいるようでした。
フェリックスに横柄に命令する経営者の姿を見て、三人の囚人は一肌脱ぐことにします。

 殺人犯ジュールが飼っていた毒蛇が大活躍します。三人は経営者の眠っていた部屋に毒蛇を忍び込ませて、経営者を葬ってしまいます。
その後毒蛇の行方が分からなくなって三人は焦るのですが、毒蛇は亡くなった経営者のズボンのポケットに潜り込んでいて、
そのポケットに手を突っ込んだ息子までが毒蛇にかまれて命を落としてしまうのです。

 「おれたちは天使じゃない」三人の囚人がフェリックスにとっての天使になっちゃったという喜劇。ちょっとブラックな味わいがありました。この三人の囚人もフランスでは生活苦で犯罪に手を染めてしまったんでしょうが、本来なら気のいいどこにでもいる男たちだったのかもしれないと思いました。
私の評価・・・良かった

2月

題名・・・「通し狂言 切られお富―処女翫浮名横櫛―」
作者・・・河竹黙阿弥
補綴・・・小池章太郎
演出・・・中橋耕史
劇団・・・前進座
主演・・・河原崎國太郎
男性・とてもよかった=22%・よかった=53%・まあまあ=24%・よくなかった=1%
女性・とてもよかった=38%・よかった=46%・まあまあ=15%・よくなかった=1%

 
 切られお富とは、歌舞伎の切られ与三郎のパロディー作品です。 前進座は端場と呼ばれる芝居の初っ端からきっちり演じ、
また観客もきっちり観るので、切られお富の最初の設定が普通の日本人の感覚には受け入れられないものだったことに驚きました。
 歌舞伎は元々見世物の延長で、主要な役者が出てくるまでは、飲み食いしおしゃべりしながら見るものという習慣があったので、
作者も書きたい放題だったのかもと思ってしまいました。

 お富は絹問屋赤間源左衛門の妾。赤間源左衛門は表向き絹問屋なのですが、実は盗賊の親玉です。お富は女中を連れて出かけたところ、手代の蝙蝠の安蔵にさらわれ、荒れ寺で手籠めにされそうになるのです。蝙蝠の安蔵は盗賊の手下。横恋慕していたとはいえ、親分の女に手を出すなんて江戸時代なのに大胆すぎて驚いてしまいました。  お富の危機に助け出してくれたのが、与三郎。与三郎とお富はかつて木更津で契りを交わしていた恋人同士で、久々のめぐり合いに愛を確かめあうのですが、それが赤間にばれて、お富はなぶり切りにされて川に捨てられる。
(お富はなぶり切りにされたのに、お富を横取りしようとしていた蝙蝠安はばれずにのうのうと無傷だという都合の良さにも驚きました)
 そして数年後蝙蝠安に助けられたお富はさった峠に茶店を出して二人で暮らしていた。そこに与三郎が通りかかって…。

 私も京都労演の会員歴が長くなりまして、労演の例会で先代の河原崎国太郎さんも拝見しています。先代の国太郎さんは個性的な役者さんで記憶している観客も多いと思うのですが、その名跡を継いだ現・國太郎さんはその大きな名前を背負う責任と覚悟が決まってきたように拝見しました。  先代さんは、幕末の退廃した雰囲気があると言われていて、私もこんな女形さんは他にいないよなと思っていました。
現・國太郎さんは全く違う個性の方なので、新たな國太郎像を作って行かれるのだなと思いました。

私の評価・・・良かった

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