新劇通信簿

2010年の例会(私のコメント付き)


2月4月6月7月9月10月・12月

12月

題名・・・「クリスマス・キャロル」
作者・・・チャールズ・ディケンズ
翻訳・・・松本永実子
脚色・演出・・・菊池准
劇団・・・昴
主演・・・金子由之
男性・とてもよかった=32%・よかった=40%・まあまあ=27%・よくなかった=1%
女性・とてもよかった=30%・よかった=52%・まあまあ=16%・よくなかった=2%

 1843年に出版された欧米では定番中の定番クリスマスを舞台にした作品です。
ただ私は名前を聞いたことがあっただけで、今までちゃんと見たことはありませんでした。
金以外の物を信じないスクルージ。一緒に働いていたマーレイの亡霊が現れて、マーレイには死後の罰として長い鎖が
絡み付いており、スクルージも今のままの生活を続ければ、死後自分と同じ罰が待っていると告げる。
スクルージの前に次々と精霊が現れ、過去・現在・未来の様子を見せる。

そして、スクルージは改心し、一人ぼっちで過ごしていたクリスマスイブを止め、クリスマスを祝う街に現れ
皆と喜びあう。

クリスマス・キャロルを見て、クリスマスの本来の祝い方とは、家族が集まってお祝いをするだけではなく、
貧しい人に施し物をするとか、自らの生き方を振り返る時なのだなと教えてもらいました。
日本の場合は、宗教を抜きにしてパーティーをするとか、サンタさんから自分の欲しいプレゼントをもらうなど
のイベントに流れてしまっているので、クリスマスとはどういうものなのかと思いを新たにすることができるのでは
ないでしょうか
私の評価・・・まあまあ

10月

題名・・・「あおげばとうとし」
作者・・・中島淳彦
演出・・・黒岩亮
劇団・・・青年座
主演・・・那須佐代子
男性・とてもよかった=15%・よかった=54%・まあまあ=27%・よくなかった=4%
女性・とてもよかった=15%・よかった=57%・まあまあ=26%・よくなかった=2%

 昭和47年3月、宮崎県の油津という田舎町の小学校の職員室が舞台。
こんなのどかな町の小学校でも、悪がきはいるもので、ゴム製品に水を詰めて教師になったばかりの
若い女の先生にぶつけたり、父親が経営するラブホテルに友達を連れて行ったり。

その子供に振り回される教師の方も、一人一人は子供達のためにとがんばっているのですが、
それぞれの生き方・指導方法の考え方の違いで色々な摩擦が子供達や親との間に引き起こされてしまいます。

職員室の中では先生の顔を持っていますが、先生たちそれぞれの私生活では夫が病気で入院していたり、
夫婦仲がうまくいってなかったり、お孫さんが生まれたりとさまざまな人間模様が絡んできます。

最後に6年生たちが練習している「あおげばとうとし」が流れてきて舞台上の先生達も一緒に合唱してるシーンで終わっていきました。

この時やっぱり「あおげばとうとし」っていいなぁと思いました。私はこの芝居の時代には中学生でしたので、
ほぼ同時代を生きていました。私が通っていた小学校では、卒業式で「蛍の光」も「仰げば尊し」も
歌われませんでした。当時、その理由を説明してくれた先生は仰げば尊しの歌詞の中の「身を立て名を上げ」が
良くない、先生自身も仰がれて尊ばれるようなことはしていないと言ってました。仰がれて尊ばれることを先生達が
放棄したから大阪の学力は全国的に低いのかもと思えてきました。

同年代の京都府民の友達は、「蛍の光」「仰げば尊し」歌ってたそうです。ちょっと羨ましく思いました。
その頃大阪も京都も革新系の知事さんやったはずなのに、この差は何だったんでしょうか。

話を芝居に戻して、校長先生は出てきませんでしたが、教頭先生がとても素敵な方で、子供をどう導いていけば
いいのか、先生と相談しアドバイスする姿が頼もしく、こんな教頭先生がおられる学校なら、きっとどんな事件が
起きても揺るがないだろうなと思いました。
私の評価・・・まあまあ

9月

題名・・・「鬼灯町鬼灯通り三丁目」
作者・・・東憲司
演出・・・東憲司
劇団・・・トム・プロジェクト
主演・・・冨樫真
男性・とてもよかった=32%・よかった=51%・まあまあ=14%・よくなかった=3%
女性・とてもよかった=39%・よかった=51%・まあまあ=9%・よくなかった=1%

 戦争が終わって数年が経ったある日、福岡の鬼灯町で女3人が暮らしている家に復員兵士松尾大吉が帰ってくる。
その家には大吉の妻・弥生と他に女が2人住んでいたのだ。大吉が所属していた部隊は全滅したと
聞いていた弥生は愕然とした。なぜなら弥生が大吉と結婚した理由は初恋の人・裕介に少しだけ似ていたからだ。
大吉が死んだと信じていた弥生は戦災で家を焼かれた裕介の母たちと裕介の帰りを待つことにしたのだった。
裕介の母・鶴恵は女郎屋をしていた。鶴恵は伝手を頼って赤紙が来ないようにしていたのだが、そんな母に反抗して裕介自ら入隊したのだ。

 戦死したと思われていた大吉が帰ってきたことで、近所からお祝いをもらったり、喜ばれたりしたことで、
奇跡の男として髪の毛を入れたお守りを売り始める。
 その内お守りのお陰で息子や孫が復員してきたとお礼の手紙が届くようになる。しかし喜びの手紙が
届くようになると弥生はどんどん落ち込み始める。
 それは弥生自身にとっては邪魔者の大吉は元気なのに帰って来て欲しい裕介の消息は依然として
不明だったからだ。そして弥生はとうとう精神が不安定になって家を出ると言いだす。大吉は鶴恵が
鍵を掛けていたタンスの抽き出しから裕介戦死公告を見つけ、弥生は井戸に誤って落ちてしまい・・・。

 家の庭にたくさん植えられていた鬼灯と花柳界の言い伝えなどがうまく活かされていて、
見ている私にもひょっとすると、鬼灯を提灯にしてうろうろ家の中を歩いている小人さんは
息子の浮かばれない霊を探しているのかと予感させたりしました。
 弥生が井戸に落ちて最悪の事態かと見せておいて暗転ラストシーンのハッピーエンドは
今どきの作家さんらしくて面白い仕上がりになっていました。

川島なお美さんが元女郎の役だったのですが、華がありコケティッシュでこの人におねだりされたら、
どんな人でもお守り買ってしまうだろうなと思いました。
大吉役の真山章志さんは出て来られたところから人の良さそうな雰囲気が、
女達に振り回される役にぴったりはまってるなと思いました。
 どんどん追い込まれていく弥生役の冨樫真さんの力強い演技。
女郎屋の女将で戦後のどさくさの中自分が生きていくためには純真な弥生を
利用する狡猾な鶴恵の演技。
 4人のコンビネーション、特に女3人が組んでいるタッグの強さがこの芝居をおもしろく
しているのだと思いました。
私の評価・・・よかった

7月

題名・・・「シャッター通り商店街」
作者・・・高橋正圀
演出・・・松波喬介
劇団・・・青年座劇場
主演・・・藤木久美子・高安美子
男性・とてもよかった=15%・よかった=55%・まあまあ=28%・よくなかった=2%
女性・とてもよかった=21%・よかった=62%・まあまあ=16%・よくなかった=1%

とある町の駅前商店街。元々70軒の店が並んでいた商店街だったのだが、商店主の高齢化や
隣の市に大きなショッピングセンターができたことで、40軒までに減っていた。
そんなすずらん通にある喫茶店が舞台になっていた。
喫茶店には、すずらん通り商店街の人たちが顔を出すが、そのなかでも豆腐屋と総菜屋の
奥さんが中心になって、フリーペーパーを作ったりして、商店街を盛り上げようとしていた。

そこに喫茶店の息子・辰次がインドから戻ってきて本格カレーの店を開こうと考えていた。
しかし久々に戻ってきた商店街のあまりの寂れ方に驚いてしまう。
辰次は婚約者の萌とカレー店をどこに開くかで喧嘩になってしまう。
辰次は自分が生まれ育ったすずらん商店街にしようと思っていたのだが、萌は商店会長が推進している
新たなショッピングセンターに店を作ることを望んでいた。
商店会長は、工場跡地に大型ショッピングセンターを誘致し、その中に新すずらん通りコーナーを計画していたのだ。

ただ喫茶店すずらんに集まる人たちは、商店会長の考えに乗らず、やはりすずらん通り商店街自体を復活させようと
がんばることにする。

この芝居を見てて感じたのは、豆腐屋と惣菜屋の奥さん2人がお節介でやりすぎるところもあるけれど、
この2人がいれば、きっとすずらん通り商店街は復活するだろうなということでした。

気になった点1、辰次の婚約者・萌は商店街にカレーショップを開くことに頑なに反対していたこと。
萌の姿を見てて、カレーショップの開店資金は全て萌が出しているのかと思ってしまいました。
芝居の中ではその点に関しては何も語られていませんでしたが、自分がお金を出す訳でもないのに
カレーショップを出す場所を巡って、辰次と別れ話にまで発展してしまい、そこに商店街の住人
たちも巻き込まれてしまうのは、いくらなんでも大袈裟すぎるかなと感じました。

気になった点2、芝居の後半で商店街を盛り上げるイベントとして、町にたくさんあるお地蔵さんを使って、
「地蔵まつり」というのをやることにするのですが、関西それも京都といえば、夏の終わりに地蔵盆という
行事が今なお続いている土地柄。
お地蔵さんを使ってのイベントにはちょっと違和感がありました。
私の評価・・・まあまあ

6月

題名・・・「ロッカビーの女たち」
作者・・・デボラ・ブレヴォート
翻訳・・・渡辺ひとみ
演出・・・西川信廣
劇団・・・朋友
主演・・・寺田路恵
男性・とてもよかった=20%・よかった=45%・まあまあ=27%・よくなかった=8%
女性・とてもよかった=27%・よかった=49%・まあまあ=20%・よくなかった=4%

 イギリス・スコットランドのロッカビー。
ここにロンドン発ニューヨーク行きの旅客機が、テロによって仕掛けられた爆弾によって墜落する。
その7回忌のミサが教会で執り行われ、アメリカから息子を亡くした夫婦がやってきていた。
息子の座っていた座席の真下に爆弾がセットされていたため、遺体も遺品も残らなかったので、
妻はミサから抜け出し夜通しロッカビーの森を息子の骨の一つでも見つからないかとさまよっていた。
夫はそんな妻の姿を見つめてやることしかできなかった。

夫婦が森に入っていることを知ったロッカビーの女たちが集まってくる。彼女たちは、事故の証拠品
として倉庫に仕舞われたままの血や油で汚れた衣服を洗って遺族に返してやりたいという運動を起こしていた。
しかしアメリカの国務省から派遣されてきている倉庫の責任者は、頑としてそれを認めようとはしなかった。
彼女たちは、7回忌のミサでマスコミが来ているのを盾に、倉庫に強行突入して衣類を持ち出そうとしていた。

息子を亡くした母の悲しみ。なぜ息子をロンドンに留学させてしまったのか。どうしてクリスマスの飾り付けを
手伝ってほしいから早く帰ってきてと頼んだのか。どうしてデルタ航空ではなくパンナムを選んでしまったのか。
母親はきっと7年間同じことを繰り返し繰り返し悔やんできたのだろうなと思いました。

悔やみ続けている妻の目から、夫は何事にも冷静で、その姿を見ているだけでも妻はいらだってくるのです。
しかし夫の立場からすれば、妻が取り乱しているために、全て自分が対応しなければならなかったのです。

ロッカビーの女たちは、同じ教会に通っている仲間として地域のつながりとともに宗教的つながりも深く、
そんな彼女たちでさえ昼間は強い信仰心を持っていても、夜になればその信仰心が揺らいでしまうと語りあいます。

息子の死から立ち直ることのできない夫婦のために聖書(?)か詩篇(?)の一節をロッカビーの女たちのリーダー・オリーブが
読んで聞かせるのですが、それさえも夫婦は聞く耳をもてなくなってしまっていました。

同じキリスト教圏でもスコットランドとアメリカの違い、またそれを見ている日本人の私との宗教観の違いを感じながらの観劇でした。
物証とはいえ、7年間も倉庫に入れたままで遺族に遺品を返さないなんて日本では絶対にありえないこと、
物は物として扱うその考え方にアメリカではどんな事件でも、遺品をこんな扱いにするのだろうかと思いました。

責任者が倉庫の中から見つかったと息子の旅行カバンを届けにきます。夫婦がカバンを開けると、息子が普段着ていた
Tシャツが出てきます。それを抱きしめて泣いている夫婦の姿を見て、私も感動しました。
宗教観がどんなに違っていても、親が子を思う気持ちはその壁を越えるのだなと思いました。
私の評価・・・とてもよかった

4月

題名・・・「佐賀のがばいばあちゃん」
作者・・・島田洋七
脚本・・・青木豪
演出・・・釜紹人
劇団・・・NLT
主演・・・阿知波悟美
男性・とてもよかった=10%・よかった=46%・まあまあ=36%・よくなかった=8%
女性・とてもよかった=28%・よかった=39%・まあまあ=22%・よくなかった=11%

劇団NLTのがばいばあちゃんは昭宏が大学を2ヶ月で中退したころから
漫才師になって名前がうれだしたころまでの話でした。
昭宏は野球の推薦で広島の有名高校に入学するのですが、2年の時に怪我をしたこで
甲子園に出場することが出来ず、チームメイトが大学野球やプロ野球の選手になっている
ことにコンプレックスを感じていました。
そのためせっかく母親が工面してくれた入学金を棒に振って大学を辞め、がばいばあちゃんに
会いに帰ってきていたのでした。
昭宏にはもう一つ目的がありました。遠距離恋愛の彼女に会うことにしていたのです。

昭宏が家に戻って来ると見知らぬ男がいました。この男は10年前にばあちゃんの家に
泥棒に入ったところを見つかり、ご飯を食べさせてもらった上に泊めてもらい、翌日役所へ
行って仕事を探してこいと諭されていました。
お陰で自動車修理の技術を覚え、今は大分で中古車販売の会社の社長をしているということでした。
その夜、ばあちゃんの家には昭宏の母や叔父夫婦社長に昭宏の友達まで集まって宴会が始まります。
そこへ昭宏に会えなかったと言って噂の彼女が現れて・・・。

おばあちゃんの笑いの中に含蓄のある言葉の数々で、そうだなぁと納得させられることがあり
私もこの芝居を見たことがきっかけで「佐賀のがばいばあちゃん 笑って生きんしゃい」という本を
買ってしまいました。ちょうどこの芝居の頃のエピソード中心に書かれていたので、もう一度芝居を
なぞることができました。

阿知波さんが演じるがばいばあちゃんはどんなに大変なことが起きても全て受け止めてしまうのでは
と思えるほど頼もしくて、こんなおばあちゃんだったら人生の壁にぶち当たる度に会いに帰りたく
なるだろうなと思いました。

私の評価・・・とてもよかった

2月

題名・・・「グレイクリスマス」
作者・・・斎藤憐
演出・・・高瀬久男
劇団・・・グレイクリスマスの会
主演・・・三田和代
男性・とてもよかった=18%・よかった=21%・まあまあ=28%・よくなかった=1%
女性・とてもよかった=21%・よかった=57%・まあまあ=21%・よくなかった=1%

平日の夜公演のみだったので、観劇しておりません。悪しからずご了承ください。

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